不動産売却

【転勤で空家になったら】マンションを売るか?貸すか?どちらが得か?

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10年ほど前に春日井のマンションを買っていただいたFさんの転勤が決まった。そのマンションを売るか?貸すか?どうすればいいか?というご相談をいただきました。

  • 相談者Fさんは40代男性
  • 家族で転勤先に引越し
  • マンションは築25年
  • 春日井駅近くの3LDK
  • 10年前に約1800万円で購入
  • 住宅ローン返済が月5万円
  • ローン残高は約1400万円
  • 管理費と駐車場で月3万円支出
  • 固定資産税は年間9万円支出
  • 経済的には困っていない

「売るか」「貸すか」どちらがいいか?という問いに対して「絶対に貸すべきだ!」とか「絶対に売るべきだ!」と即断できるほど話は単純ではないです。

マンションの立地や部屋の状況によって売買や賃貸の需要がどうなのか?相談者の意向と経済的な事情はどうなのか?目先の損得じゃなく長期的な視点で考えていく必要があります。

売りにしても貸すにしてもメリットとデメリットがありますが、今回の記事では、Fさんのマンションのケースについて説明してみます。

Fさんがマンションを「貸したら」どうなるか?

マンションを貸した場合のメリットとデメリットは以下のとおりです。

貸すメリット

  • マンション残せる
  • 賃料収入を得られる
  • 賃料でローン返済
  • 値上りしたら得する

貸すデメリット

  • 空室や滞納リスク
  • 修繕費や税金の負担
  • 住宅ローンは残ったまま
  • 解約が大変

一番のメリットは「賃料収入」が得られること

マンションを人に貸せば、賃料収入を得られます。その賃料が毎月入ってくるので、生活費の足しにしたり、貯金したり、住宅ローンの返済に回したり、定期収入として好きなように使うことができます。

マンションに思い入れがある、また転勤で戻ってくる可能性がある等、まだ手放したくない人にとっては、マンションを所有しながらも、収入を得られるというのが、最大のメリットと言えます。

Fさんのマンションの賃料相場は、「月額9~11万円」

Fさんのマンションの賃料相場は、月額9~11万円です。最低でも9万円、上手くいけば11万円でも借り手が見つかるかもしれないといったところです。月10万とすれば、年間120万円の収入となりますね。

分譲マンションには管理費と修繕積立金の負担がありますが、これは人に貸してる場合でも、貸主(所有者)が管理組合に支払いし続けることになります。

また賃料とは別に共益費をとる場合もありますが、この賃料相場は共益費込みとして考えてください。駐車場代は賃料とは別に、借主が支払います。

Fさんの場合、住宅ローンの支払いが毎月5万円、管理費と駐車場で毎月3万円、固定資産税年間9万円ですから、これらの支出分は、すべて月10万円の賃料収入でまかなえてしまい、ローン残高も減っていきます。

空家のまま維持しておくより収入の足しに

春日井の賃料相場として、10万円以上の予算で賃貸マンションを探している入居者は少ないのが実情です。

都会のように高額賃料をとれることはないので「賃料で儲ける」というよりは「空家のまま税金や管理費やローンを払い続けるくらいなら、人に貸して収入の足しにする」という感覚がしっくりくると思います。

デメリットは「修繕費の負担」と「空室や滞納」のリスク

メリットである賃料収入を得るために、いろいろな支出が発生するのが大きなデメリットと言えます。

まず人に貸すためには、お部屋をリフォームして綺麗にする必要があります。クロスの張替えやハウスクリーニング程度で済むのか?キッチンやトイレやお風呂も交換しないといけないのか?

どこまで手直しするかはケースバイケースですが、まずリフォームという先行投資が発生します。

また入居者募集は不動産業者に依頼しますが、借主が決まれば仲介手数料の支払いも発生します。さらに、契約期間中は、お部屋の設備など故障があると修繕費は発生します。

これらの支出も賃料収入を得るためにはやむを得ないことですが、リフォームしても入居者がなかなか決まらないとか、不良入居者による滞納があると、そもそも賃料収入が得られないということも起こりえます。

Fさんのリフォーム費用は、クロス張替えなど最低限で済むが50万円

Fさんのお部屋は、10年前に購入したときにフルリフォーム済なので、クロスの張替えをするくらいで問題なく人に貸すことができます。

キッチンやお風呂や給湯器など水回りの設備も交換してあり、基本的には表装リフォームでクロス張替えやハウスクリーニングなど50万円くらいで収まりそうです。

これがもし、水回りの設備が古すぎて新品に交換するとなると、リフォーム費用は3倍~5倍くらいに跳ね上がることになります。150万円~250万円くらい?リフォームの程度や仕様によって安くすることもできますが、上限はありません。

契約期間中の設備の故障は貸主負担が原則

契約期間中も、お部屋の設備でなにか故障があると、貸主が修理や交換をしないといけません。特に給排水関係や給湯関係は古くなれば不具合が起こりやすくなります。

エアコンやコンロなども元々設置してある設備なら貸主が、借主が持ち込んだものや照明などの消耗品類は借主自身で維持管理することとなります。

いつ発生するかわかりませんが、貸主にとって修繕負担は避けられない義務となります。

いったん貸すと貸主都合で返してもらえない

一般的な、賃貸借契約というのは、借主の居住権利が強く守られています。貸主の都合で契約をやめることができない。あらかじめ契約期間を2年や3年と決めて契約を結んでも、借主がまだ住みたいと望めば、基本的に契約は更新されてしまうと思ってください。

例えば、転勤が終わってお部屋に戻りたいからと、借主に退去を求めても拒否されてしまえば、貸し続けないといけません。

ちなみに契約期間が満了したら、必ず契約が終了して借主は退去しないといけない「定期借家契約」という契約形態がありますが、それだと借主が嫌がってなかな入居者が決まらない現実もあります。

結局、いったん人に貸してしまうと、貸主の都合で自分で住みたいとか、売りたいとかいっても、お部屋は返してもらえない可能性が高いと承知しておきましょう。

住宅ローンが残ったままでは新規ローンが組めない

もし転勤先や新しい場所でマイホームを買いたいとなった場合、住宅ローンが残ったままだと新規の住宅ローンが組めない可能性があります。

自己資金や収入が多いとかでダブルローンを組める方もいますが、基本的にはいまの住宅ローンを完済する条件が付きます。

近い将来に、新しいマイホームの購入を考えている方はご注意ください。

Fさんがマンションを「売ったら」どうなるか?

マンションを売った場合のメリットとデメリットは以下のとおりです。

売るメリット

  • 売却代金が得られる
  • ローンを返済できる
  • 税金・管理費がなくなる
  • マイホーム控除つかえる
  • 新居を買いやすくなる

売るデメリット

  • マンションがなくなる
  • 売却経費の支出
  • 確定申告の手間
  • ローン残債を残せない

マンション売却のメリットは高く売れる

Fさんのマンションの売却相場は1600万~1800万円

Fさんのマンションの売買相場は1600~1800万円です。

10年前の購入当時から比べてもそこまで値下がりはしていません。むしろ少し上がっているくらいです。

立地的にも人気のあるマンションなので、最低でも1600万円、上手くいけば1800万円でも買い手がみつかる可能性があります。

ローン完済と管理費・固定資産税がゼロに

Fさんには、住宅ローンの残債が1400万、毎月5万円の返済、また管理費と駐車場の月3万円、固定資産税年間9万円の負担があります。

もし売却すると、1600万円で売っても、住宅ローン残債は完済、ほかの管理費等や税金の負担もゼロに。

またローン残債がなくなるので、つぎのマイホームを買うときに、新たなローンを組むのに支障がなくなります。マイホームが欲しいタイミングでいつでも買える状況になるというのも大きなメリットです。

売却経費の支出について

売却にともない費用の支出があります。印紙代、登記費用、仲介手数料などです。

もし1700万円で売却したとすると、印紙代1万円、登記費用約2~3万円、仲介手数料約62万は必須の支出です。

一般的には売買条件は「現状渡し」のケースが多く、家具や荷物は撤去して、お部屋を空にして引き渡せばOKです。

残置物の処分などがあればその費用は必要です。買主にマンションを引渡した後も、一定期間内に設備の故障など発覚した場合は、売主負担で修理しないといけない場合もあります。

管理費や修繕積立金、固定資産税の支払いは引渡日以降は買主が引き継ぎます。

売却に対する税金は?

売却ともなう税金、「不動産譲渡税」の心配があります。譲渡税は、マンションを取得したときよりも高く売った場合など、利益がでた部分に対して課税されます。

Fさんの場合は、もともと買った金額よりも安く売却することになるので、譲渡税はかかりません。もし高く売ったとしても、住まなくなって3年経過した年の年末までに売却すれば、3000万控除という特例が使えるので、どちらにしても税金はかかりません。

ただし税金が非課税となっても、売った翌年の確定申告は必要となります。

売却価格がローン残債より少ない場合は自己資金が必要

Fさんの場合は、マンションを売れば、残債を完済できますが、なかには、ローン残債よりも安い価格でしか売れないというケースもあります。

ローン残債のある不動産を売る場合の原則として、売却と同時に必ずローン完済しないといけません。そうしないと銀行が抵当権を外してくれず買主に所有権移転ができない仕組みなっているからです。

例えば、ローン残債は1400万あるけど、1200万でしか売れないという場合は、足りない200万円は、売主が自己資金か、他から借りてでも工面して完済資金にあてる必要があります。

売るか?貸すか?結論は?

貸したほうがいい人はこんな人

  • 売りたくない人
  • いずれまた住みたいという人
  • こどもに残しておきたいという人
  • 売れる金額よりローン残債が多い人
  • 値上がりしそうなマンションを所有している人

売ったほうがいい人はこんな人

  • 所有し続ける理由がない人
  • 売っても貸してもどっちでもいい人
  • 住宅ローンの返済をしたい人
  • 新しいマイホームがほしい人
  • 値下がりしそうなマンションを所有している人

売っても貸してもどちらを選択してもいい人

  • 住宅ローンがない人
  • お金に困ってない人
  • 人気マンションを所有している人

Fさんが売却することを決めた理由

Fさんの結論としては、転勤してからマンションを売却することに。

このマンションは、立地やお部屋の状態も良いので、それほど値下がりの心配もないので、現状維持で所有し続けても、人に貸しておいても損はないでしょう。

ただご本人は、春日井に戻ってくるかどうかもわからないし、マンションに特別な愛着もないということで、高く売れるうちに売って、住宅ローンも完済してスッキリしたい。

そうすれば、次にどこでマイホームを買うにしても、身動きがとりやすいと。

高く売れるうちに売却をおすすめ

「貸したほうがいいか」「売ったほうがいいか」いろいろと説明してきましたが、「貸す」のと「売る」のを比較するのってあまり意味がないことだと思います。

なぜなら金銭的な損得の結論が出るときって、「売ったとき」だから。

貸しときは、賃料収入と経費支出をみれば、目先の損益はわかります。でも、1年後は?3年後は?5年後、10年後は?

売却もそう。5年後や10年後にいくらで売れるかなんて、予想はできるけど、そのときになってみなきゃ結局わからない。

だから、売るか?貸すか?迷うときは、シンプルにその不動産を所有し続けたい理由があるか?愛着があるとか、子どもに残したいとか、なんでもいいです。そういう気持ちがあれば、慌てて売らずに残す方法を考える。

そして、特に所有し続ける理由がないなら、高く売れるうちに売っておいた方がいいという結論になります。

ここ数年、春日井の中古マンションも平均価格は上がっていますが、基本的には築年数が古くなれば価格は安くなる傾向が強い。管理費や積立金は高くなるし、設備の故障も増えてきます。

都心の一等地の人気マンションは別として、経年により売却相場は下がっていくと考えるのが自然です。

売れない(売りたくない)事情が特別にある場合をのぞいて基本的には貸すより売る方向で考えたほうがいいでしょう。

貸すのは、賃料で儲けるためじゃないですよ。マンションを所有し続けるための一時的な活用方法として貸すという選択肢があるだけ。

別に貸さずに空き家のまま持っていたっていいわけですから、迷うなら慌てずにじっくり検討しましょう。

ABOUT ME
山本 直嗣
山本 直嗣
春日井シティ不動産(株)代表
名古屋のお隣、春日井市で不動産業を営む。地元の鳥居松出身で鳥居松小柏原中OB。平成17年に春日井シティ不動産を創業し、不動産売買と賃貸管理を中心に1000件以上の不動産問題を解決。趣味はラグビー。
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