【土地の固定資産税】建物を解体更地にしたら税額6倍になるって本当?
よく建物を解体して更地にすると土地の固定資産税が高くなるという話を聞きます。今回の記事では、更地にしたら土地の固定資産税はどれくらい高くなるか?について説明します。
木造の店舗兼住宅(空家)が建っている250㎡の土地を購入したAさんは、2年後にそこに新居を建てる予定をしています。その店舗兼住宅(空家)は築50年経過しているボロ家なので、できるならすぐにでも解体して更地にしたい。でも、更地にすると土地の固定資産税がかなり高くなるという噂を聞いて、それまで空家のままにしておくか、解体して更地にするか悩んでいます。実際にどれくらい高くなるのでしょうか?
更地にしたら土地の税額は最低でも2~3倍上がる?6倍という噂も?
Aさんが買った土地建物の現在の固定資産税は、土地は約15.4万円、建物(空き家)は約2万円。あわせて年間で約17.4万円。
解体すれば建物の税金はゼロになるが、更地にすると土地の税金は高くなるのは間違いない。2倍に上がったとしても、税額は年間30.8万円に跳ね上がる。なんと6倍に上がるという噂もあるらしい。
更地にすると固定資産税が高くなる理由
固定資産税は、行政が固定資産評価基準に基づき決定した「評価額」に税負担の調整措置や軽減措置を考慮して算出した「課税標準」に対して、「税率(固定資産税は1.4%)」をかけると「税額」が決まります。
ちなみに、「評価額」と実際の売買相場は異なる。建物の場合は、基本的には、「評価額」がそのまま「課税標準」。土地の「評価額」の目安は、公示価格の7割程度。公示価格と実際の売買相場も相違することも多いが、一応、公示価格は取引価格の目安となる一つの指標。春日井の住宅地の売買相場の目安は坪30万から50万円といったところ。
Aさんが買った土地評価のイメージ
Aさんが買った土地を例に出すと、こんな感じ。話をわかりやすくするために「都市計画税」は省略してます。
町名地番 | 地目 | 地積(㎡) | 評価額(円) | 課税標準(円) | 税額(円) |
---|---|---|---|---|---|
○○町 1丁目1番 | 宅地 | 250.00 | 22,000,000 | 11,000,000 | 154,000 |
Aさんの土地評価額と税額
この土地の「評価額」は2,200万円、それに調整や軽減措置がなされた結果、「課税標準」は1,100万円。あとはこの課税標準に、「税率」を掛けるだけ。
Aさんの土地の固定資産税は、1,100万円×1.4%=15万4千円。という計算になります。
特例措置により固定資産税が安くなっている
評価額と課税標準の違いが分かりづらいかもしれませんが、「評価額」ではなく「課税標準」がいくらかによって税額が決まるということをおさえておきましょう。そして、土地が住宅用地の場合は課税標準額が軽減される(つまり税金が安くなる)以下の特例措置があります。
ちなみに住宅用地以外の商業用地や駐車場等の場合の「課税標準」は、「評価額の7割」が目安となります。住宅用地のような軽減特例はありません。また農地は元々別格に安くなっています。
1.小規模住宅用地の特例措置
200㎡以下の住宅用地は、課税標準額が6分の1に軽減されます。例えば、本来であれば15万円がなんと2.5万円の税額になるということ。約83%の減額ですからとても大きな軽減措置です。
2.一般住宅用地の特例措置
一般の住宅用地は、課税標準額が3分の1に軽減されます。200㎡までは小規模宅地の特例を受けられるので、200㎡を超える面積分がこの特例の対象となります。小規模宅地よりは軽減が少ないものの、それでも約67%の減額となります。
更地になると軽減措置がなくなり税金が高くなる
そもそも住宅が建っているから土地評価は軽減が効いて安くなっているのです。だからその建物がなくなると土地の軽減もなくなってしまう。理屈としては本来の税額に戻ったということですが、結局のところ土地の税額が上がってしまうというわけです。
更地にして小規模住宅適用がなくなると何倍高くなる?
6分の1の軽減が受けられる200㎡の小規模住宅用地があるとします。仮に、この土地の「評価額」が1,500万円だった場合、下記のイメージになります。
町名地番 | 地目 | 地積(㎡) | 評価額(円) | 課税標準(円) | 税額(円) |
---|---|---|---|---|---|
□□町 2丁目2番 | 宅地 | 200.00 | 15,000,000 | 2,500,000 | 35,000 |
小規模住宅特例で軽減された土地評価額と税額
小規模宅地の特例のおかげで6分の1に軽減された「課税標準」は250万。「税率」は1.4%。この土地の「税額」は3.5万円となります。
更地にしたら土地の税額は4.2倍に増額
ではもし、この土地上の住宅を解体して更地にしたらどうなるか?小規模住宅用地の特例が使えなくなるとこうなります。
町名地番 | 地目 | 地積(㎡) | 評価額(円) | 課税標準(円) | 税額(円) |
---|---|---|---|---|---|
□□町 2丁目2番 | 宅地 | 200.00 | 15,000,000 | 10,500,000 | 147,000 |
小規模住宅特例の軽減がなくなった土地評価額と税額
更地になると「課税標準」は「評価額の70%」に
建物を解体して更地になると、6分の1の軽減特例がなくなり、「課税標準」は本来の「評価額の70%」の水準となります。
「評価額」1,500万円の「課税標準」は1,050万円。「税率」は同じく1.4%。「税額」は14.7万円に増額。
小規模住宅用地の特例がつかえたら3.5万円だった税額は、倍率にして4.2倍、金額にして11.2万円の増額となりました。
建物分の税額が0になってもそれ以上に土地分の税額が上がる
土地の税額は6倍まではいきませんが、それでも相当な増額になるのは間違いない。
建物して更地にすれば建物分の固定資産税はなくなりますが、築年数の古い住宅なら土地の増額分より安いはず。それ以上に土地の税額が増えるケースが多いでしょう。
Aさんの土地の場合、どれだけ高くなるか?
Aさんの土地の固定資産税のイメージ
町名地番 | 地目 | 地積(㎡) | 評価額(円) | 課税標準(円) | 税額(円) |
---|---|---|---|---|---|
○○町 1丁目1番 | 宅地 | 250.00 | 22,000,000 | 11,000,000 | 154,000 |
Aさんの土地評価額と税額
実はAさんの場合、建物が店舗兼住宅なので、住宅用地の特例の恩恵は、半分しか受けることができません。
さらに土地は200㎡までの小規模住宅用地の特例、それを超える50㎡分は一般住宅用地の特例で計算するので、「課税標準」が1,100万、「税額」が15.4万となっています。
余談ですが、Aさんの建物が店舗兼用じゃなく普通の住宅だったら、小規模住宅と一般住宅の特例がすべて適用されて、課税標準が440万円、税額6.16万円まで下がります。
Aさんの場合、土地は約1.2倍の21.56万円へ増額
Aさんの土地が更地になると、小規模住宅用地と一般住宅用地の特例は使えなくなり、こんな感じになります。
町名地番 | 地目 | 地積(㎡) | 評価額(円) | 課税標準(円) | 税額(円) |
---|---|---|---|---|---|
○○町 1丁目1番 | 宅地 | 250.00 | 22,000,000 | 15,400,000 | 215,600 |
特例が使えなくなったAさんの土地評価額と税額
土地の「課税標準」は「評価額の70%」になります。「課税標準」が1,540万となり、「税額」は21.56万円に上がります。
建物の固定資産税2万円はなくなりますが、土地の固定資産税は6.16万円の増額です。元々の土地建物の税額は、年間17.4万円でしたが、更地にすると年間21.56万円となり、約4万円の増額となります。
最低でも2,3倍に増えると思ったAさんでしたが、更地にしても思ったほど増額せずホッとされていました。
6倍にはならない!住宅か非住宅、土地の広さによっても増税額は変わる
Aさんの土地の場合は、建物が店舗兼用住宅で軽減特例が元々半分しか受けられてなかったので、更地にしても倍率にして1.2倍、金額にして4万円ほどの増額で済みました。結果としては、当初の希望通りに先に更地にして維持管理をしていくことになりました。
もし、Aさんの建物が、店舗兼用じゃなく住宅として軽減特例をまるっと受けてると、土地の税額は6.16万円でした。その場合は、倍率にして3.5倍、金額にして15.4万円の増額となっていました。どちらにしても更地にした場合の税額は同じです。でも元の税額によって増税の負担感はかなり変わってくると思います。
更地にしたら土地の税金が上がるのは事実なのですが、住宅用途なのか商業用途なのか、土地に広さによっても大きく変わってきます。一概に何倍に上がると言えないのがむずかしいところ。6倍まではいきませんが、2倍から4倍くらいの幅はありそうです。
固定資産税は毎年4月1日起算なので、1月1日現在の状況によって、翌年度の税額が決まります。1月1日時点で更地になっていれば、すぐ4月から土地の税金は上がります。1月1日以降に解体すれば、1年分は安いままで済みます。
どのタイミングで解体するかによっても税負担の影響がでてきます、ご注意ください。