家は買ったほうが得か?借りるほうが得か?という、TVや雑誌でも定期的に取り上げられる定番ネタ。この記事はそれについて思うことを書いてみます。最初に言っておくと、僕自身は購入派です。ただ、買うのにも借りるのにもそれぞれメリットとデメリットがある。その人の仕事や経済状況、家族構成にもよるだろうし、物件そのもの良し悪しや、例えば、「大都会の東京」と「名古屋のベッドタウン春日井」の地域事情にもよるでしょう。今回は、春日井の地域事情を踏まえて考えてみます。
春日井の持ち家率は63.1%で、ほぼ全国平均。
平成27年の国勢調査の人口等基本集計というデータをみると、春日井市の持ち家率は63.1%。全国平均は62.3%。富山県は78.1%で持ち家率日本一。東京が45.8%で持ち家率最下位。春日井は人口約30万人の名古屋のベッドタウンですが、ほぼ全国平均値です。
別のデータによると、持ち家自体は昭和16年ごろの戦時中だと20%そこそこだったが、戦後の昭和23年には60%超えてたそうで、日本の文化として持ち家信仰が根付いて70年以上、現在に至ってるという状況です。令和になり、ポストコロナといわれる時代の大転換期ですが、旧来の大人になったら結婚して、家族ができて、家を買って一人前。みたいな価値観はいまだに根強い。
ところが、最近は、家を買うなんてムダとか、損するとか。賃貸の方が得とか、リスクが少ないとか、よく聞かれるようになりました。
ホリエモンとか勝間和代とかひろゆきとか、多くのインフルエンサー的な人も、マイホーム購入否定派の意見は多いように思います。
マイホームは資産じゃない??収益を生まない不動産に価値はない??

戦後以降、日本人の土地信仰というか、資産としての不動産への信頼は絶大だったと思うんです。とにかく不動産を持つ。持ったら離さない。土地の価値は上がり続けるはず。
けど、昭和末期か平成初期あたりからバブル経済崩壊して土地が暴落したり、少子高齢化がすすんで空き家が増え、家余り時代とも言われてます。また、20年以上も前ですが、ロバートキヨサキの「金持ち父さん貧乏父さん」という本が流行りました。
個人的には極端な考えだとは思いますが、収益性を生まない不動産は資産じゃないとか、ローンを抱えたマイホームはただの負債だみたいな考えもあったり。それこそ、親が子どものためにと残していた不動産をいらないという人も増えています。
不動産の収益性とかリスクに対する考えも一般に広く知られるようになって、不動産に対する価値観も変わりつつあるのがいまの時代です。
持ち家、賃貸、それぞれのメリットとデメリット
持ち家か得か?借りるのが得か?というのは、金銭的な損得で語られる話です。
参考例として、家族4人で住むために、30歳のAさんが、春日井市のJR春日井駅徒歩10分の場所に、1.新築建売住宅を3500万で買った場合と、2.月額賃料10万で借りた場合を比べてみましょう。
ざっくり3500万を35年ローンで金利1%で借りたとします。(※話をわかりやすくするために細かい設定は無視します。)
その場合、毎月の支払いが約10万。借りた場合の家賃と同額です。年間120万、30歳から65歳まで合計4200万どちらも支払うことになります。
ここまでは引き分けなので、ここから買った場合と借りた場合の違いをもっと見ていきましょう。
1.新築建売住宅を3500万で買った場合の良い点、悪い点
購入ならではの良い点、メリット
自分の所有不動産なので、誰の許可を得ることもなく、いつまでも住むことができるし、好きなように改装もできます。
また、いつでも売ることができます。ただし、値下がりしてしまえば、ローンより下回って売るに売れないというリスクもあります。建物に関しては木造の場合、20年たてば価値がゼロになるとよくいいますが、物件によるので半分本当です。
しかし、土地に関しては、過疎地じゃなければ価値がゼロになるということはありません。春日井駅徒歩10分という設定は、それなりに35年後も需要がある場所という意味を込めています。
地価が上がるということはないでしょうが、それなりの価格で売却は可能と考えます。現金で買えるのなら、ローンの金利負担はなくなるので、Aさんの場合、賃貸より700万支払いは少なくなります。
購入ならではの悪い点、デメリット
金銭的なデメリットとしては、固定資産税が毎年かかります。ざっと年間15万くらいで試算すると35年で525万の負担。
35年後には建物評価はないので税額も下がりますが、所有し続けるかぎり負担は続きます。また、建物というのは、躯体も設備も古くなると劣化や故障などが必ず出てきます。
外装や内装の箇所によって数年ごと十年ごとに修繕やメンテナンス費用がかかります。この費用はピンキリですが、最低でも年間10万くらいは先々の修繕予算としてみておく必要があると思います。
あとは、ローン金利が上がって支払額が増えたり、土地や建物が値下がりする可能性、簡単に売ったり引っ越したりできないというリスクも付け加えておきます。
2.月額賃料10万で借りた場合の良い点、悪い点
賃貸ならではの良い点、メリット
賃貸の場合は、いつでも引越しできるという身軽さがメリットです。大きな住宅ローンの負担がない強みがあるでしょう。家族や健康や職場や経済状況にあわせて住まいを変えることができるのは、ローンを抱えた持ち家派には簡単ではないことです。
ただし、賃貸住宅の質やグレードは持ち家にはとうてい及びません。また、住みたい家に住めるかどうかもわかりません。さらに高齢になると、貸してくれる家がないという状況も有りえます。
これはリスクとして考えておくべきことです。
賃貸ならではの悪い点、デメリット
持ち家はローンを完済すれば毎月の支払いはなくなりますが、賃貸は生きてるかぎり、借りてるかぎり負担は続きます。
Aさんの場合、引越ししなければ、65歳以降も毎月10万支払い続けないといけません。66歳から75歳までの10年しても、さらに1200万の負担。住み続けるかぎり、死ぬまで支払い続ける費用があります。
あとは、借りてる家なので、自分の好きなように改装することもできませんし、建物や共有部分の使用に関して制限がかかる場合があります。
どちらが得かはっきりするのは、持ち家(土地)を売ったとき
上記の設定はかなりアバウトですが、参考例Aさんが家を買った場合と借りた場合の金銭的な損得の比較をしてみました。
Aさんの場合、ぱっと見だと金銭的にはそこまで大きな差はないように思えるのではないでしょうか。しかし、最終的な損得比較としては、土地がいくらで売れるか、あるいは売れないかがポイントです。
土地が売れるなら、購入した方が借りてる場合よりも圧倒的に金銭的にも上回ります。ただし、値下がりしたり売れない場合は、負の資産となってしまう可能性もあります。
正直、前提条件の設定によって、買った方が得にすることも、借りた方が得にすることも、余裕でねつ造できてしまいます。
私は、絶対的に購入派。ただし物件によります。
最初にも書きましたが、不動産の所有に対する価値観が変わりつつあって、昔の人ほど、いまの人は不動産の価値に重きをおいてないのは、事実だと思います。家を買うのは損だ、借りた方が得だという人が増えているのも事実かもしれませんが、個人的にはそう言い切ってしまうのは早計だと思います。
別にどちらが正しいという話ではないし、好きな方を選べばいいだけの話ですが、じつは、金銭的にいっても、春日井に関して言えば、一般的に良いと思われる物件なら買った方が人生設計がしやすくなって結果としても賃貸より得すると思います。
なぜなら、名古屋のベッドタウンとしての春日井の住宅としての需要はなくならないと思っているからです。ただし、春日井の中でも人気のある地域とそうでない地域の二極化はこれからもすすむし、買ったら高い確率で損するだろうという物件は少なからずあるので、そこの目利きは重要です。
あと、これはとても大事なことだと思いますが、持ち家には、自分や家族の住まいとして、居場所として、拠り所として、生活の基盤となる部分です。
春日井の賃貸物件ではなかなか満足のできる物件が少ないという事情もあります。金銭的な損得では測れない生活の満足度にかかわるものがあると思います。実際、春日井にも賃貸に住んでる人はたくさんいますが、買ったら損だからとか、賃貸の方が得だから、という理由で住んでいる人は少ないのではないかと思います。
結局、どっちが得かという二者択一の設問に無理があるというつまらないオチになってしまうのですが、賃貸だろうが、売買だろうが、幸せな生活ができることが一番です。
家は損得で買うものでもないと思いますので、物件を探している皆さまが、素敵な物件に出会えることを祈念しております。